道具には頼らない、という口先

なんでサポーターを付けないの?なんで裸足なの?なんで上裸なの?と言われることがある。その度に闇に引きずり込まれる。

疑問に答えると、それは道具だからだ。俺はトレーサーだ。道具に頼らず己の身体のみで動く存在だ。もちろん社会で生きる以上、ある程度の道具が必要であることはわかっている。でも、だからといって道具を使っていると、それはトレーサーとして道具に頼っていることと同義になってしまう。極端な話、衝撃を吸収できるパワードスーツがあったとして、それを着て動くことはパルクールだろうか。空を飛ぶシューズを履いて跳ぶことはパルクールだろうか。違う。それはパルクールではない。道具に頼った何かでしかない。

程度の差が違うだけでサポートも、シューズも、服さえも道具だ。

だからこそ俺は葛藤する。俺とて社会で生きる人間。サポーターはさておき服や靴はどうしても必要になる。必要とならない環境を見出すことも一応成功しているが、このような環境下でのみ完結できるほど俺のパルクールはコンパクトじゃない。

俺は探している。服や靴を使っても良い理由を。正当化でもいい、屁理屈でもいい。とにかく 俺は、俺を納得させなければならない。でも納得させられたことはない。それほどにこの問題は深い。闇だ。底なしの沼のようだ。俺は、どうやったら脱出できる?